保母と園児たち

242 :本当にあった怖い名無し:2012/09/08(土) 01:49:40.02 ID:coaa0Lr20
関東地方周辺のある河川上流にての話

その川の上流は片側が切り立った崖がそそりたち、もう一方の川岸はアスファルトで
を敷いた遊歩道になっている。散策を開始したのは午後に入ってからだ。
流れに沿ってひたすら上流にまで遡る道で、二時間ほど歩いた地点で少しもめた。
四人で来ていたのだが、田舎育ちのおれは「きた道を引き返すのにもまた二時間かかる
こういう場所は陽が落ちるのが早い。今引き返さないと、日の光があるうちに入口の
地点まで戻れない。」そう言った。しかし、東京育ちで平素、山にも谷にも行かない同行者達は、街灯のない所で
陽が落ちるとどうなるのか、全く想像できないようだった。
引き返すにしても別のルートから帰ろう、せっかく来たのだからもう少し
先へ行こうなどと言う。どうにも理解してくれないので踵をかえして下流方向へと歩いた。全員揃ってここで日没を迎えたら、にっちもさっちも
いかなくなる。ならば一人だけでも遊歩道の入口に戻っておけば、車で残った者を迎えに行けると考えた。
陽が傾きかけると山の渓流はすぐに薄暗くなりだした。切迫感に駆られて、おれは競歩ほどの速さで急いだ。
谷はどんどん暗くなっていく。しまいには駆け出した。集落に着く前に闇のなかで歩けなくなるのでは。焦燥感がつのる。遊歩道におれ以外の観光客の姿はもうない。
心細く焦る耳に歌が聞こえてきた。幼い子の合唱する声だ。
夕焼けこやけで日が暮れて〜やぁまのお寺の鐘がなる〜
ぎょっとして背後を見たら、五十才代の保母さんと体操帽とスモッグを来た幼児達がいた。保母さんと目があった。
おれはずっと一本道をここまで歩いてきた。その間、一人だった。それに
おれは走っていた。保母と園児たちは、俺が遊歩道の入口を出たすぐ後に歌と共に遊歩道から出てきた
戸惑っていると、連れがおれの後ろから息をいらせて駆け寄ってきた。
かえりの車の中、幼稚園児いたよな? 歌うたってたよな? と聞くと
三人とも「居なかった」と答えた。そういえば現れた時同様に忽然と居なくなっていた。
幽霊を目撃したというより、異なる日付けに、同じ場所の同じ時間帯にいた者同士が
あり得ない鉢合わせをしたような感じだ。なぜあの保母さんはおれを見、おれはあちらを見ることが出来たのだろう。
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